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食物繊維には血糖値の上昇を抑える効果が!その理由を解説

食物繊維には血糖値の上昇を抑える効果が!その理由を解説

食事を通して私たちが普段から口にしている食物繊維。実は食物繊維は糖尿病、虚血性心疾患などの生活習慣病への予防効果も認められている、すごい栄養素なのをご存知でしたか。食物繊維と血糖値関係から、食物繊維の持つその他の働きもご紹介します。

食物繊維には血糖値の上昇を抑える効果が!その理由を解説
  1. 血糖値と食物繊維の関係
    • 血糖値が上がりやすい食べ物
    • 血糖値が上がりにくい食べ物には食物繊維が豊富
  2. そもそも血糖値とは?
    • 血糖値が変動する仕組み
    • 糖尿病とは
  3. 食物繊維で血糖値を抑える
    • 食物繊維にはほかにこんな効果も

血糖値と食物繊維の関係

毎日の食事をとおして私たちが口にしている食物繊維。便の量を増やすだけでなく、腸内のビフィズス菌、乳酸菌といった善玉菌を増やしてくれる働きにより、腸内環境を正常に整えてくれる効果がある、とても大切な栄養素です。

そして、食物繊維の働きはそれだけではありません。体内でコレステロールから作られる胆汁酸が体外へ排泄されることを促し、血中のコレステロール値を下げてくれる働きもあります。また食物繊維のなかでも水に溶ける性質のある「水溶性食物繊維」は、消化管での糖質の吸収を遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑えてくれる効果があります。
食物繊維は糖尿病、虚血性心疾患などの生活習慣病への予防効果も認められている、すごい栄養素なのです。

血糖値が上がりやすい食べ物

食品ごとの血糖値の上がりやすさは「GI値」という数値で示されます。GI値が高い食品ほど体内で急速に消化・吸収され、血糖値を著しく上昇させます。逆にGI値の低い食品は消化・吸収のスピードが遅いため、血糖値の上昇が穏やかになります。
白米、白パン、もち米、にんじん、小麦などはGI値が高く、特に血糖値を上げやすい食品です。

血糖値が上がりにくい食べ物には食物繊維が豊富

一方、食物繊維の豊富な食品は、食後の急激な血糖値の上昇を抑えてくれる作用があるといわれています。特に食物繊維のなかでも水に溶ける性質のある「水溶性食物繊維」は、糖質の吸収を遅らせて血糖値の上昇を抑える効果があります。

水溶性食物繊維はこんにゃく(粉)、しろきくらげ(乾)、らっきょう、ケール、干しわらび、小豆(乾)、きなこなどに多く含まれています。
また高GI食品である白米も、雑穀を混ぜたり玄米に置き換えたりすれば、血糖値の上がりにくい献立に変身させることができます。

そもそも血糖値とは?

ここまで食物繊維と血糖値の関係について紹介しましたが、ではそもそも血糖値とはなんでしょうか。
体のなかを流れている血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを「血糖値」といいます。通常値は食前で約70~100mg / dlですが、健康な人でも食事をとる前ととった後ではその値が変動します。

血糖値は低すぎても高すぎても体にとっては良くありません。血糖値が低すぎる「低血糖」はふるえや動悸、脳へのエネルギー不足による意識低下や昏睡の症状を招きます。また血糖値が高すぎる「高血糖」が長く続くと、動脈硬化や糖尿病などの病気を引き起こす恐れがあります。

血糖値が変動する仕組み

血糖値が食前と食後で変動する理由は、ブドウ糖にあります。ブドウ糖とは、果物や穀類などに含まれる糖質が体内で消化吸収されることによって作られる物質のことで、私たちが活動するために欠かせない重要なエネルギー源になります。糖質などを口にすると、血液中のブドウ糖の濃度が上昇、血糖値が高くなるという仕組みです。血糖値が上昇するとインスリンというホルモンがすい臓から分泌され、ブドウ糖が体の細胞に取れ、エネルギー源として利用されます。また、余分なブドウ糖をグリコーゲンへ変えることによって血糖値を下げてくれます。そしてこのグリコーゲンは肝臓や筋肉に蓄えられます。
一方で、空腹時は体内のブドウ糖濃度が下がり、血糖値が下がります。そんなときは肝臓などに貯えられたグリコーゲンがブドウ糖に分解され、それをエネルギーとして使い、血糖値を正常に戻してくれます。
私たちの体には、血糖値をちょうど良い値に保とうとする機能が備えているのです。

糖尿病とは

生活習慣病のひとつとしてよく耳にする糖尿病。糖尿病とは、血糖値を下げる役目をしてくれるインスリンの分泌不足や作用不足により、血糖値が慢性的に高い状態になってしまう病気のことです。重症になると血液中の糖が尿にあふれ出し、尿から甘い匂いがすることでその名が付きました。

糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。1型糖尿病は自己免疫疾患などによりインスリンの分泌細胞が破壊されることが原因です。2型糖尿病は遺伝的要因のほかにも過食や運動不足など日々の生活習慣が原因で発症するといわれています。日本人の糖尿病患者の多くは2型で、その疑いがある人(可能性を否定できない人を含む)は成人の6人に1人、約1870万人にのぼっています。
糖尿病は自覚症状がないまま重篤な合併症に進展してしまうことも多く、網膜症・腎症・神経障害の三大合併症のほか、動脈硬化が進行して心臓病や脳卒中のリスクも高まる怖い病気です。

食物繊維で血糖値を抑える

血糖値が高すぎることは私たちの体にとって良くない、ということはお分かりいただけたと思いますが、そこであらためて注目したいのが食物繊維です。
血糖値を急激に上昇させてしまう白米などの高GI食品も、食物繊維が豊富な食べ物と一緒に食べることで血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。これは、食物繊維のなかでも水に溶ける性質のある「水溶性食物繊維」が、糖質の消化管での吸収を遅らせてくれるからです。食物繊維を十分にとることで血糖値の上昇抑制が期待できるため、具体的な量の目安としては1日で男性21g以上、女性18g以上の食物繊維を摂取することが推奨されています(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)。慢性的な高血糖が引き起こす糖尿病を改善するための食事療法としても、食物繊維を豊富にとることがすすめられています。

 

また、噛みごたえのある食品は食物繊維の量が多く、よく噛んで食事をするようになるので、時間をかけてゆっくりと食べることになり、結果的に食べ過ぎを防止したり少ない量でも満腹感が得られたりする効果もあります。食事をするときは食物繊維の多い野菜から食べる「ベジファースト」という食べ順を心がけるようにすれば、食後の血糖値を抑える効果がより期待できるのでおすすめですよ。

食物繊維にはほかにこんな効果も

血糖値の上昇を抑える効果がある栄養素、食物繊維。ですが、食物繊維がもつ効果は実はそれだけではありません。
まず、よく知られている一番大きな効果は、便通を整えて便秘を防いでくれること。タンパク質・脂質・炭水化物などの栄養素は消化酵素によって分解・消化され体内に吸収されていきますが、水に溶けない不溶性食物繊維は消化・吸収されずに小腸を通って大腸まで達し、便の体積を増やす材料となってくれます。

また、不溶性食物繊維は大腸内の環境を改善する腸内細菌にも利用され、これらの菌を増やすことが明らかになっています。食物繊維には便秘を予防するだけでなく、腸の調子を整えてくれる作用もあるのです。
さらに脂質や糖、ナトリウムなどの物質を体外へ排出してくれる働きもあるので、糖尿病をはじめ肥満や脂質異常症(高脂血症)・高血圧などの生活習慣病の予防や改善にも効果が期待できるのです。

このようにたくさんの良い効果をもたらしてくれる食物繊維は、その働きの有能さから5大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」と呼ばれることもあります。日々の食生活のなかで意識して摂取することで健康的な体を手に入れましょう。

監修者尾上 雅子(管理栄養士)

    大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。

    ライターMugi

      3歳・1歳の2人の男の子を育てる在宅ライター。食・インテリア・子育て系のコラムをはじめ執筆ジャンルは多岐にわたる。得意分野は新しい商品やサービスの紹介記事。

      参考リンク
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