食物繊維が便の不調に効く理由と、注意すべきポイント
食物繊維が便の不調に効く理由と、注意すべきポイント
私たちが日ごろ口にする食べ物に含まれ、健康への有用な働きから五大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれる食物繊維。代表的な効果として、便通を整えてくれる整腸作用が知られています。では、なぜ食物繊維は便の不調改善に効果があるのかを詳しく解説します。
- 食物繊維が便の不調に効くのはなぜ?
- 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の働き
- 食物繊維不足かも?便の色と硬さをチェック
- 便の調子が悪化することも?便秘タイプ別食物繊維のとり方
- 腸の動きが鈍いタイプは「不溶性食物繊維」がおすすめ
- 腸がけいれんを起こすタイプは「水溶性食物繊維」がおすすめ
- 食物繊維で便の不調を改善!おすすめの食品は?
- 便の調子にあわせた食物繊維のとり方を
食物繊維が便の不調に効くのはなぜ?
私たちが日ごろ口にする食べ物に含まれ、健康への有用な働きから五大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれる食物繊維。代表的な効果として、便通を整えてくれる整腸作用が知られています。
では、なぜ食物繊維は便の不調改善に効果があるのでしょうか?食物繊維はタンパク質・脂質・炭水化物などの栄養素とは違い、消化管のなかで消化酵素の作用を受けずに小腸を通過して、大腸まで達します。大腸に達した食物繊維は便のかさを増す材料になるほか、大腸内の環境を改善する腸内細菌にも利用されます。食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があり、それぞれ異なるアプローチによって便通を整えてくれます。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維」
https:/ /www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
https://www.e- healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の働き
水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維と、水に溶けない性質を持つ不溶性食物繊維。この2種類の食物繊維は、それぞれどのようにおなかの調子・便通を整えてくれるのでしょうか。
水溶性食物繊維には便を柔らかくする働きが、不溶性食物繊維には便のかさを増やす働きがあり、それぞれ便秘など便の不調に対して大腸内で異なる働きをすることが分かっています。そのため、便秘の種類や原因に応じて、「自分は水溶性・不溶性のどちらの食物繊維が必要か?」という点を意識して摂取することで、より効果的に便通を整えることが期待できます。自分の便の調子を気にかけながら、2つの食物繊維を日ごろからバランス良くとり、おなかや便の調子を健康的に保てるよう心がけるとよいですね。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
食物繊維不足かも?便の色と硬さをチェック
現代の日本人の食生活において、食物繊維が不足しているという調査結果があることから、便秘に悩まされている方も多いかもしれません。自分が日ごろから食物繊維を十分に摂取できているかを知るためには、便の色や状態をセルフチェックすることが大切です。
まずは便の色をチェックしてみましょう。黒っぽい便の場合は腸内の「悪玉菌」が優勢なサイン。悪玉菌は腸内環境を悪化させるため、腸内は不調気味の可能性があります。これに対し、黄色〜黄色っぽい茶色の便は、腸内環境を整えてくれる「善玉菌」が腸内で優勢な状態です。便の色は、腸内環境の健康状態を知る目安にするとよいでしょう。そして、便の状態も注意してチェックしてみましょう。コロコロとして硬く、水分量の少ない便は便秘の状態、泥状や液状のやわらかい便は下痢の状態であり、腸の調子があまり良くないことを表しています。スムーズに排便できる健康的な便は、熟したバナナのような形状・やわらかさが理想的です。健康的なバナナ型の便を目指し、食物繊維を意識的に摂取するようにしましょう。
また、たとえ便意がなくても毎朝トイレに行くなど決まった時間に排便するように心がけ、排便を習慣化させることが大切です。普段から便の状態をチェックすることで腸の健康状態を把握し、食物繊維が足りているかどうかの目安にするとよいでしょう。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
https://www.e- healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/ food / e-05-003.html
参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年度版)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/ 0000042632.pdf
便の調子が悪化することも?便秘タイプ別食物繊維のとり方
一口に便秘といっても、便秘にはさまざまな種類があるのをご存知ですか?便秘は腸管機能の異常を原因とする「機能性便秘」と、腸管の疾病を原因とする「器質性便秘」に大別されます。機能性便秘はさらに「弛緩性(しかんせい)便秘」「痙攣性(けいれんせい)便秘」「直腸性便秘」に分類され、常習性便秘の状態にある日本人のうち、約2/3は、大腸の運動・緊張の低下によっておこる弛緩性便秘であると言われています。
便秘の原因には不規則な食事や生活、水分不足などさまざまな要因が挙げられますが、食物繊維の不足も便秘を引き起こす大きな原因のひとつです。そして便秘のタイプによって、水溶性食物繊維を多くとるのが該当なのか、不溶性食物繊維を多くとるのが該当なのかも変わるため、食物繊維のとり方にも注意する必要があります。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「便秘と食事」
https://www.e- healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html
腸の動きが鈍いタイプは「不溶性食物繊維」がおすすめ
便のもとは、腸の壁がゆっくりと収縮する「ぜん動運動」という腸の動きによって運ばれます。しかし、日本人に多い弛緩性便秘の方は、大腸のぜん動運動の機能が低下してしまっている状態です。このように、大腸の動きが鈍っているタイプの方は、不溶性食物繊維を意識してとることがおすすめです。不溶性食物繊維は便のかさを増すことでぜん動運動を活発にし、便通を促してくれる働きがあります。弛緩性便秘でお悩みの方は、規則正しい生活・食事・適度な運動を心がけるとともに、不溶性食物繊維を含む食品を意識的にとるとよいでしょう。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「便秘と食事」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html
腸がけいれんを起こすタイプは「水溶性食物繊維」がおすすめ
腸管の自律神経失調によって引き起こされる痙攣性便秘の方は、大腸の痙攣性収縮によって便を運ぶ働きが妨げられている状態です。この痙攣性便秘は若年者や中年女性に多く見られ、過労やストレス、環境の変化など精神的な問題が要因になりやすいと言われています。このように、腸が痙攣を起こすタイプの方は、水溶性食物繊維を意識してとるとよいでしょう。水溶性食物繊維は胃や腸内でゲル状になり、便をやわらかくすることで便通を促す働きがあります。
また、ゲル状の水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサにもなるため、腸内環境を整えることにもつながります。そのため、水溶性食物繊維を含む食品を摂取することは痙攣性便秘に対して効果的と言えます。ただしこのタイプの便秘の方は、便のかさが拡大すると腸をさらに刺激してしまうため、不溶性食物繊維を多く含む食材は適切ではありません。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「便秘と食事」
https://www.e-healthnet.mhlw.go .jp / information / food / e-02-010.html
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e -05-001.html
食物繊維で便の不調を改善!おすすめの食品は?
便の不調に対し、それぞれ違う角度からアプローチしてくれる水溶性食物繊維と不溶性食物繊維。では、水溶性・不溶性それぞれの食物繊維を豊富に含む食品にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、便をやわらかくしてくれる水溶性食物繊維は、ライ麦パン、糸引き納豆、ごぼう、モロヘイヤ、なめこなどに含まれています。痙攣性便秘でお悩みの方はこれらの食品を意識してとるようにするとよいでしょう。便のかさを増やしてくれる不溶性食物繊維は、玄米、しらたき、さつまいも、おから、ブロッコリー、まいたけなどに含まれています。弛緩性便秘の方はこれらの食材を意識的にとるようにしましょう。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いを理解し、普段からどちらもバランス良くとることで、健康な腸の状態を目指したいですね。
便の調子にあわせた食物繊維のとり方を
生活習慣や生活環境によって、おなかの調子や便の状態は人それぞれです。便のセルフチェックを習慣にすることで、自分の健康状態を把握できますし、不調に気が付くきっかけにもなります。便秘のときは便通を改善するために食物繊維のとりかたを見直すことで、おなかの調子を整えるようにしましょう。
またこれまでお話ししたように、便秘のタイプもさまざまです。水溶性・不溶性など、食物繊維の特徴を正しく理解し、腸の状態にあわせて食物繊維をとることが大切です。痙攣性便秘の方は、不溶性食物繊維の入った食品をとりすぎないようにするなど、食物繊維で腸の調子を調整してみてはいかがでしょうか。おなかの調子にあわせて食物繊維と上手に付き合いましょう。
大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。
3歳・1歳の2人の男の子を育てる在宅ライター。食・インテリア・子育て系のコラムをはじめ執筆ジャンルは多岐にわたる。得意分野は新しい商品やサービスの紹介記事。