ポイント
- 「食物繊維」は、ビタミン・脂質・糖質・たんぱく質・ミネラルに加えて、第6の栄養素として注目される
- 「水溶性食物繊維」は、腸内で余分な糖や脂質、有害物質を排せつさせ、「不溶性食物繊維」は、便のカサを増し、腸のぜん動運動を促す働きがある
- 「食物繊維」は、生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できる
第六の栄養素、「食物繊維」
食べ物の中に含まれ、人の消化酵素で消化することのできない物質、それが「食物繊維」。 人の小腸内で消化・吸収されにくく、健康の維持に役立つ生理作用を発揮する食品成分で、整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目され、第6の栄養素といわれています。
この「腸に吸収されにくい」ことが、他の食品成分には“できないことができる”最大の特徴です。 水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に大別でき、それぞれの特徴を紹介します。
水溶性食物繊維とは
「水溶性食物繊維」は、大麦、柑橘類、海藻類などに含まれ、水に溶けて粘度が増し、小腸での栄養の消化吸収を遅らせ、血糖値の急激な上昇を防ぐ働きがあり、腸内で余分な糖や脂質、有害物質を吸着し、排せつさせる働きもあります。
不溶性食物繊維とは
一方、「不溶性食物繊維」は、野菜、きのこ類、豆類などに多く含まれ、水分を吸収して、胃や腸で大きく膨らみ、便のカサを増し、腸壁を刺激することで腸を動かし、腸のぜん動運動を促す働きもあります。
また、食物繊維は、便通を整えて便秘を防ぐうえで欠かせないもので、脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きもあるため、これらを摂り過ぎることによって引き起こされる肥満や脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できます。
食物繊維量は不足している?
そんなさまざまな働きのある「食物繊維」、残念ながら日々の摂取量は不足しています。 日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、現状では、低下しています。
最近の報告によれば平均摂取量は一日あたり15g前後と推定され、厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたりの「目標量」は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっている中、残念ながら摂取量は不足しています。 食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品や主食の穀類から摂ることをおすすめします。
監修 : 青江 誠一郎
大妻女子大学家政学部食物学科教授/一般社団法人日本食物繊維学会理事長