ポイント
- 食物繊維を多くとる人は、心筋梗塞のリスクが低下
- 食物繊維が糖尿病のリスクを減らす
- 加工度を抑えた全粒穀物をとると体重が減少し、高食物繊維だが加工度の高い食品をとると体重が増加するという報告もある
食物繊維を多くとる人は、心筋梗塞のリスク低下
昨今、基礎疾患をいかに予防するかの意識も高まってきているのではないでしょうか? 食物繊維は、欧米において一日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞のリスク低下が観察されるとの研究報告があります。
日本においても、45~65歳の男女約8万6千人を平成16年(2004年)まで追跡した調査結果にもとづくと、「食物繊維摂取量が多い女性は循環器病発症リスク、脳卒中発症リスクが低い」こと、その内、「脳卒中発症リスク低下については、水溶性食物繊維よりも不溶性食物繊維の方が影響する」ことなどが分かっています。
食物繊維が糖尿病のリスクを減らす
また「糖尿病」に関する食物繊維の研究結果もあります。オタゴ大学の研究で、1型糖尿病および2型糖尿病の成人8,300人から収集したデータを解析し、42件の試験についてメタ解析をした結果、食物繊維の摂取量の多い人は、少ない人に比べ、早期死亡率が低下することが明らかになっています。
また、食物繊維の摂取量の多い人は、少ない人に比べ、空腹時血糖値、インスリン値(インスリンの分泌量、血中濃度)、インスリン抵抗性(インスリンの効き具合)、総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪などがそれぞれ減少したことも確認できています。
研究チームはまた、糖尿病予備群、1型糖尿病、2型糖尿病の成人(1,789人)を対象に、食物繊維の摂取量を増やす食事療法を行った42件の試験についてメタ解析をした結果、糖尿病予備群、1型糖尿病、2型糖尿病のすべてのタイプの糖尿病において、食物繊維の摂取量を増やすことで、血糖コントロール、コレステロール値、体重が一貫して正常化することを明らかにしました。
加工度を抑えた全粒穀物の利点
興味深いことに、全粒穀物は食物繊維の重要な供給源となりますが、加工度の高い食品になると、たとえ食物繊維が含まれていても効果が薄れるという報告もあります。
この実験で参加者は、全粒粉の入ったパンや、オート麦、玄米などの加工度の低い食品を2週間食べ、その後、同等の食物繊維が含まれる、加工度の高いインスタントなバーなどの食品を2週間食べています。
研究チームは、持続して血糖測定を測定できるデバイスを使用して、2週間の介入期間中に、参加者の昼と夜の血糖値の変化を記録した結果、食物繊維が含まれており、加工度が最小限に抑えられた全粒穀物などの食品を摂取すると、1日を通して血糖値の変動の幅が少ないことが明らかになり、2週間後には体重も平均して1kg近く減っていました。
それに対し、加工度の高い高食物繊維の食品を食べた場合は、体重はむしろ増える傾向がみられています。食物繊維は自然に近い食品から摂るのが良いといえます。 より健康的な未来を手に入れるために、食物繊維をより積極的にとる食生活がおすすめです。
監修 : 青江 誠一郎
大妻女子大学家政学部食物学科教授/一般社団法人日本食物繊維学会理事長