ポイント
- 食物繊維の少ない食事を続けることは、自分だけの問題ではなく、 子孫の腸内環境にまで悪影響を与えてしまう可能性がある
- 妊娠中の母親の腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が胎児の発達に影響を与えることによって、 出生後、子が肥満になりにくい体質をつくる(マウス実験の結果より得られたものです。)
- 世代を超えて影響を与える食物繊維をより積極的に食生活に取り入れていこう
食物繊維不足が子孫に与える影響
ヒトの腸内細菌を再現したマウスに食物繊維の少ない食事を与えると、その腸内細菌の種類も数も減少し、腸内フローラの多様性が失われました。さらにそれだけでなく、子や孫の際の腸内フローラも乱れ、子や孫の際で改めて食物繊維多い食事を与えても、腸内フローラの改善はできなかったというものです。これはヒトについても同じことが起こり得ることを示唆しています。
つまり、食物繊維が少ない食事を続けることは、自分だけの問題ではなく、子孫の腸内環境にまで悪影響を与えてしまう可能性があるといえます。
妊娠中の食物繊維摂取は、子が肥満になりにくい体質をつくる
国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究グループは、妊娠中の母親の腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が胎児の発達に影響を与えることによって、出生後、子の代謝機能の成熟に関与し、その結果、肥満への耐性を与えることに繋がることを明らかにしています。 この結果より妊婦の腸内環境が子の健康に重要であることが示唆されました。
今回は、「マウス実験」での結果を紹介しましたが、食物繊維の取り方が、世代を超えて影響するのは非常に興味深い結果と考えます。食物繊維をより積極的に食生活に取り入れていきましょう。
監修 : 青江 誠一郎
大妻女子大学家政学部食物学科教授/一般社団法人日本食物繊維学会理事長