コーヒーやお茶・ワインなどに含まれることで広く知られるポリフェノール。一口にポリフェノールと言っても、とても多くの種類が存在し、その中には野菜に含まれているものもあります。ここでは、ポリフェノールを含む野菜やポリフェノールの摂取量に関する研究についてご紹介します。
ポリフェノールってどんな成分?
ポリフェノールとは?
ポリフェノールは飲料、野菜、果物など植物性の食品に含まれる成分です。ビタミンやミネラルなど食品の「栄養素」とは異なり、「有用成分」などと位置づけられています。ナスやブドウの色素成分「アントシアニン」、緑茶の苦味成分「カテキン」などを耳にされたこともあるかと思います。
それらは一部で、ポリフェノールの種類は約数千にもおよぶと言われます。身近なところでは、「納豆」や「みそ」、「油あげ」など大豆食品に含まれる「イソフラボン」もポリフェノールの一種です。
ポリフェノールの研究が進んだ背景
ポリフェノールが注目されるようになった背景には、日本人の食生活の変化が関わっています。1960年代の高度経済成長期。食事には生命を維持するだけではなく、「味」や「香り」が求められ、その結果、食の多様化が進みインスタント食品なども開発されました。
1980年代には食べ過ぎや生活習慣が問題となり、栄養学の世界では栄養や嗜好に次ぐ、食品の第三の働き「体調調節面での働き」の研究が進みます。その対象とされた成分が、ポリフェノールやカロテノイドなど、それまでは軽視されがちだった非栄養素成分だったのです。
ポリフェノールの代表的な働き
ポリフェノールの代表的な働きの一つに「還元作用」があります。還元作用とは、私たちの身体を内側からキレイにする働きのことです。
多忙な毎日を送り、食習慣や生活習慣が乱れがちな現代人には欠かせない働きと言えます。
ポリフェノールを含む野菜
ポリフェノールの種類はいろいろ
ポリフェノールは「フェノール性水酸基を2個以上持つ化合物の総称」と定義されています。約数千種類あるポリフェノールですが、大きなグループでは「フラボノイド類」と分類されているものがあります。フラボノイド類は、植物の葉、花、果実、茎、根などほとんどの部位に存在し、フラボノイド類だけでもこれまでに約8000種類以上の成分が報告されています。「フラボノイド類」に分類されている代表的なポリフェノールをみていきましょう。
フラボノール
フラボノールは天然に多く存在するフラボノイドで、野菜や果物、穀類のほとんどに含まれています。代表的な成分は、タマネギやエシャロットなどに含まれる「ケルセチン」、ニラやブロッコリーに含まれる「ケンフェロール」。野菜に広く含まれていることで知られています。特にタマネギはケルセチン含有量が高いこと、一般に消費量が多いこと、体内で利用されやすいことから、ケルセチンの摂取に重要な野菜とされています。
またケルセチンは、フラボノイドの中でも高い還元作用を持つため、高い有用性が報告されています。
アントシアニン
ブルーベリーに含まれることで有名なアントシアニンは、野菜では赤しそや紫キャベツなどにも含まれる赤〜紫色の色素成分です。代表的な成分にシアニジンなどの成分があります。
イソフラボン
イソフラボンは、主に大豆に含まれるフラボノイドですが、野菜でも葛やそら豆などにもわずかに存在します。代表的な成分は、ダイゼイン、ゲニステイン。ほとんどは胚芽部分に含まれ、種皮には含まれないことが確認されています。大豆イソフラボンの女性をサポートする作用はよく知られています。
他にも日本人が主に緑茶で摂取しているカテキンは、樹木性の植物に広く含まれるポリフェノール。緑茶には4種類のカテキンが含まれ、その量は緑茶の重さの約15〜20%にもなると言います。
さらに、「フラボノイド類」とは異なりますが、主にコーヒーなどに含まれるクロロゲン酸という成分があります。かつてはリンゴを切った断面を褐色に変化させ品質を低下させる等、ネガティブなイメージの強い成分でしたが、近年ではその高い還元作用が注目されています。コーヒーの生豆中には約5〜8%、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーにも含まれることが分かっています。野菜ではさつまいもなどに含まれています。
ポリフェノール摂取量に関するさまざまな調査
ポリフェノール摂取量に関するさまざまな調査
このように、ポリフェノールと一口に言っても細分化するといくつかの種類に分けられます。人におけるポリフェノールの摂取量を推定して、健康リスクとの関連を調べる研究はさまざまおこなわれているものの、現状、日本国内に定められた摂取量の基準はありません。しかしながらポリフェノールは私たちの健康に関わる可能性があることが多くの基礎研究により報告されています。ポリフェノールには、体の調子を整える作用が期待できると言われています。
フラボノイド類を多く含む食材の調査
ポリフェノールの中でも特に植物に多く存在する「フラボノイド類」については、アメリカの米国農務省(USDA)にて含有量が公開されています。
フラボノイド類(フラボノール)を含む野菜をいくつかピックアップすると、100gあたりの含有量は、そば(ケルセチン23.05mg)、ニラ(ケンフェロール10mg)、赤タマネギ(ケルセチン19.93mg)、さつまいもの葉(ケルセチン20.54mg)、クレソン(ケンフェロール13mg)とされています。
ポリフェノールを効率よく摂取するには
野菜の捨てられる部分に数倍も含まれるポリフェノール
ポリフェノールは、植物の皮や種など「捨ててしまう部分」に多いと言われています。そこで身近な野菜の枝豆やにんじん、かぼちゃなどで、皮や種と可食部のポリフェノール含有量を調べてみました。
100gあたり枝豆のさやなど捨てる部分には、実の約1.3倍。パプリカのわたなど捨てる部分には実の約4倍。にんじんの皮には果肉の8倍。かぼちゃの種・わたには実の約2倍以上。それぞれ多くのポリフェノールが含まれていることが分かりました。
野菜はなるべくまるごと食べよう
ポリフェノールは種類が多く、何にどのくらい含まれ、目安の摂取量はどのくらいか大部分は研究段階です。とはいえ、植物の皮や種などに多く、色素や苦味として存在し、還元作用など健康をサポートする重要な働きがあることも分かっています。
毎日の食事では、できるだけたくさんの色の野菜をとりいれて食卓をカラフルにする。皮や種などもできるだけ料理に使うなど工夫すれば、がんばりすぎずに摂取できそうです。
部位100g当たり栄養分析値(当社調べ)
※横にスワイプすると表をスライドできます。
野菜 | 100g当たり栄養成分 | 構成比 | 食物繊維 g/100g | カルシウム mg/100g | カリウム mg/100g | ビタミンA μg/100g | ポリフェノール mg/100g |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コーン | 芯 | 33% | 15.3 | – | – | – | – |
実 | 67% | 5.6 | – | – | – | – | |
枝豆 | さや | 45% | 12.0 | 138 | 314 | – | 80 |
豆 | 55% | 5.8 | 84 | 691 | – | 60 | |
ビーツ | 皮 | 10% | 4.3 | 39 | – | – | 210 |
果肉 | 90% | 2.2 | 13 | – | – | 80 | |
パプリカ | 種、わた、へた | 12% | 7.2 | 34 | 711 | 20 | 120 |
果肉 | 88% | 1.3 | 7 | 261 | 90 | 30 | |
えんどう豆 | さや | 47% | 7.1 | 95 | – | – | 50 |
豆 | 53% | 4.2 | 25 | – | – | 30 | |
にんじん | 皮 | 10% | 4.5 | 51 | 759 | 613 | 80 |
果肉 | 90% | 2.8 | 26 | 315 | 807 | 10 | |
かぼちゃ | 種、わた | 16% | 11.7 | 22 | 726 | 259 | 70 |
果肉 | 84% | 2.5 | 17 | 442 | 146 | 30 |
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監修 : 尾上 雅子(管理栄養士)
大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。
出典元
- 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
- 野菜の機能性研究の現状と今後の研究課題
- 貯蔵によるサツマイモ塊根のポリフェノール成分と抗酸化性の変動
- 文部科学省 資源調査文化会
- 成果 第1章 機能性成分等新たな健康の維持増進に関わる成分の分析に対するニーズ調査
- 厚生労働省 健康食品の正しい利用法