食物繊維をとりすぎると下痢になる?適切な量と食材とは
食物繊維をとりすぎると下痢になる?適切な量と食材とは
- 下痢の原因は食物繊維?
- 水溶性食物繊維のとりすぎかも。食物繊維は2種類ある
- 溶性食物繊維の食材
- 不溶性食物繊維の食材
- 腸内環境を整えよう
- 食物繊維のもつ腸内を整える力
下痢の原因は食物繊維?
そもそも「食物繊維」とは、人の消化酵素では消化されずに、小腸を通過して大腸にまで達する食品成分のこと。食物繊維をとることで、大腸の環境を整える腸内細菌を増やせると同時に、便の体積を増やすことができます。そのため便通を整える効果が期待できる成分として知られています。第6の栄養素といわれることもあります。
厚生労働省によると、食物繊維の1日あたりの目標量は18〜64歳で男性21g以上、女性18g以上とされています(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より)。実際、1950年頃の日本人の平均摂取量は一人あたり1日20gを超えていました。しかし食生活の欧米化で穀類やいも類、豆類の摂取が減ったことにより、現代の日本人の平均摂取量は1日あたり15g前後に減少しているという推定も出されています。実はいまの日本人には食物繊維が不足しているのです。
食物繊維が不足している人が多い現代では、食物繊維のとりすぎで下痢になる心配はないのでしょうか。それにはまず食物繊維の種類とそれぞれの働きについて知る必要があります。
水溶性食物繊維のとりすぎかも。食物繊維は2種類ある
食物繊維にはたくさんの種類がありますが、おおまかに「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2つに分けることができます。
水溶性食物繊維は、水に溶けてサラサラした状態になるのが特徴です。身体に良くない物質が体内に吸収されるのを防ぎ、便として排出させる効果ももっています。主なものとしてペクチン・グルコマンナン・アルギン酸・アガロース・アガロペクチン・カラギーナン・ポリデキストロースなどがあります。
いっぽう不溶性食物繊維は、水に溶けずに水分を取り込んで膨らむという特徴をもっています。便の体積を増したり、腸の壁を収縮させて便を運ぶ「ぜん動運動」を促したりといった働きをもたらし、主なものとしてセルロース・ヘミセルロース・キチン・キトサンなどがあります。
水溶性食物繊維の食材
水溶性食物繊維が多く含まれる食べ物は、こんにゃく粉、しろきくらげ(乾)、らっきょう、エシャレット、あずき(乾)、きなこなどです。
また、留意しておきたいのが特定保健用食品(トクホ)です。トクホの中で「おなかの調子を整える」と表示されている製品の多くには、水溶性食物繊維のひとつである「難消化性デキストリン」という成分が使われています。
上でも述べたように、現代の日本人には食物繊維が不足気味なため、通常の食生活であれば食物繊維のとりすぎを心配する必要はほとんどありません。食物繊維をとりすぎて下痢になるという危険性も低いでしょう。しかし難消化性デキストリンに関しては、過剰にとりすぎることで下痢や軟便を招く可能性が指摘されています。
トクホには標準的な摂取量やとり方が明記されているので、とる前に内容をきちんと確認しましょう。また人によっては標準量以下であってもおなかがゆるくなることがあるので、体調の様子をみながら利用することが大切です。
不溶性食物繊維の食材
不溶性食物繊維が多く含まれる食品には、きくらげ(乾)、凍みこんにゃく(乾)、わらび(乾)、おから(乾)、とうがらし(果実・乾)、まいたけ(乾)などがあります。
整腸作用で知られる食物繊維ですが、便秘気味の人は不溶性食物繊維のとりすぎには要注意。便秘の人はぜん動運動の機能が弱まっているため、便の体積が大きくなり過ぎることで便がスムーズに進まず、かえって便秘が悪化する可能性があります。便秘を解消したい場合には、便を軟らかくする働きがある水溶性食物繊維を意識してとるとよいでしょう。
腸内環境を整えよう
大腸には約1000種類、100兆個の腸内細菌が生息していて、大きく善玉菌、悪玉菌、どちらでもない菌の3つに分かれています。良い腸内環境とは、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が多い状態のことです。腸内細菌のバランスが乱れることで、下痢や便秘といった症状を招くことがあります。
腸内細菌が健康的な状態であるかどうかは、毎日の便を観察すればわかります。健康的な便は黄色から黄色がかった褐色、においがあるが臭くなく、柔らかいバナナ状。腸内環境が良くないと黒っぽい色、悪臭がある便になります。
食物繊維のもつ腸内を整える力
食物繊維は消化されずに大腸にまで達するので、腸内に存在する善玉菌の「エサ」になってその数を増やす効果があります。便の量や硬さを良くし排便を促す効果や腸内環境を整える効果もあるのです。
多くの食材はどちらか一方の食物繊維だけが含まれるのではなく、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を併せ持っています。いろいろな食品をバランスよく摂り、不足分を補うように心がけるとよいでしょう。食物維物をとって腸内環境を整え、下痢や便秘になりにくい食生活を目指しましょう。
大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。
外部サイトに遷移します
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
- 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2015年版)の策定方針について(案)
- 松島病院 大腸肛門病センター|「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の含まれる食物と効果
- 文科省食品成分データベース食品成分ランキング
- 国立がん研究センター東病院|下痢・便秘がある方のお食事
- 機能性表示食品の届出情報検索|機能性「おなかの調子を整える」の検索結果による(92/118)
- 「健康食品」の素材情報データベース
- 「健康食品」の安全性・有効性情報
- NHK|食物繊維をとりすぎると便秘が悪化!? 便秘改善になる量と食材とは
- NHK|ストレスや腸内細菌の乱れで下痢や腹痛に!若者に増える過敏性腸症候群
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
- NHK|食で健康「食物繊維たっぷり!やわらか根菜料理」